資本主義の限界 2015 1 18
書名 無税国家のつくり方
著者 大村 大次郎 ビジネス社
この本の内容は、題名とは違って、
「限界に直面している資本主義に対して、
我々は、どうすべきなのか」という大きなテーマを書いています。
確かに、先進国の資本主義は限界に直面していると思います。
お金(money)は、各所に滞留して、速度が落ちています。
それは、たとえば、家計や企業において、
貯金や内部留保という形で滞留していると思います。
「お金の速度」という不思議な言葉を使いましたが、
お金は、使われてこそ存在意義があるのであって、
滞留してしまえば、その存在意義が問われるのです。
資本主義の「健康」を維持するには、
ある程度、「お金の速度」を維持する必要があります。
資本主義国では、社会の成熟化に伴い、
お金が各所に滞留して、
お金の速度(回転速度)が低下するのは、避けられないかもしれません。
日本では、少子高齢化が進んで、
社会構造そのものが変化しています。
確かに、発展途上の過程においては、
貯金は、お金の速度を落とす原因にはならなかったのです。
国民は、銀行に貯金して、
銀行は、企業に融資をして、
企業は、その資金で設備投資をする。
つまり、工場を建設する。
しかし、今や、
社会が成熟化するに伴い、
国民は、銀行に貯金するが、
銀行は、融資先がないので、
国債投資に励む。
あるいは、中央銀行が金融緩和しても、
緩和マネーは、融資に回らず、
株式市場へ直行する。
その結果、好景気の実感がないのに、
株価は、史上最高値を記録する。
確かに、資本主義の限界かもしれません。
一方、創意工夫が得意なアメリカ人は、
こうした資本主義の限界に対して、
「バブル・リレー」で乗り切ってきました。
古くは、ITバブル、
その次は、不動産バブルに金融バブル、
最近では、シェールガス・バブルとなっています。
一部の評論家は、「オバマケア・バブルもあった」と言っています。
このような「バブル・リレー」で注意が必要なのは、
早く「次のバブル」を見つけないと、
バブル崩壊後の後遺症が拡大するという問題点があります。
このようなアメリカの姿を見て、
日本人は、「さすがに、ついていけない」と思うかもしれません。
そこで、筆者は、「政府通貨(政府紙幣)を発行せよ」と主張します。
確かに、資本主義が限界に達して、
あらゆる政策を試みても効果がなかった現状においては、
このような「実験」も必要かもしれません。
政府紙幣は信用を得ることができるのかという問題に対しては、
そもそも、中央銀行は、信用があるのかという問題を考えるべきです。
リーマンショック後の金融危機に直面して、
各国の中央銀行は、史上空前の資金を市場に流し込んだのです。
たとえば、アメリカの中央銀行であるFRBは、
世界を洪水にさせるほど、ドルを大量供給しました。
実は、中央銀行の信用は、リーマンショック後、すでに「消えていた」かもしれません。